基本版面(レイアウト)の設計

基本版面は本のレイアウトの土台とも称するべきものである。この基本版面を適切に設計するかが読みやすさを大きく左右する。

具体的には、「判型」「余白」「組方向」「文字サイズ」「字詰と字間・行間」「段数・段間」を充分に検討する。

判型

判型は小説ならば、文庫判、新書版、A5判の何れかが適当である。各寸法を表として示す。

各判型における寸法
判型寸法(横×縦)[mm]
文庫判(A6判)105×148
新書判105×173
A5判148×210

天地左右の余白

文庫判か新書判ならば、天地左右に10ミリの余白は欲しい。A5判であれば、20ミリ程度の余白が適切だろうか。余白は天地同士、左右同士を揃えても構わないが、ノドは少し多めに取る。製本された時、ノド側の文章が読みづらくなる(ノドに食われると言う)のを防ぐためである。

組方向

小説であれば縦組(縦書き)が一般的である。

本文の文字サイズ

12ないし14級、あるいは8ないし10ポイントが適切である。小さくしても11Q、7.5ポイントが限度であろう(一昔前の文庫の文字サイズは6号活字であり、7.5ポイント相当である)。11級、7.5ポイントより文字サイズが下廻ると可読性が著しく損なわれる。

字詰

文庫では大体40字程度になる様にする。新書判の一段組では50字程度、新書判の二段組では25字程度になるだろう。A5判では二段組で30字程度になるだろう。

字詰は15~50字程度に収める。それ以下でもそれ以上でも読みにくくなる。字詰が短いと視線が頻繁に移動するので目が疲れやすくなる。逆に字詰が長いと、行を移るときに次行の頭を探しにくくなる。ただし、字詰が50字を越える組方でも、行間を充分にとれば、それほど読みにくくはならない。

字間と行間

字間はベタを原則とする(ベタ組と言う)。禁則処理(特定の記号類が行頭もしくは行末に来ない様にすること)によって、字間を詰めたり空けたりする場合があるが、それらはあくまで緊急避難である。

小説の本文組版ではベタ組を採用する。ベタより詰める組方を詰め組と呼び、よくある例として一歯詰めという組方がある。もともと一歯詰めは初期の写植機の字面が小さかったため、それを補正するために行われた組方である。しかし、現在のDTPのデジタルフォントは、仮想ボディに対して字面が大きめに設計されているから、詰め組は可読性を損ないかねない。デザインの技法として詰め組を否定する気は毛頭ないが、本文では素直にベタ組をした方がよい。

行間は本文文字サイズの0.6倍を基準とし、0.3ないし1.0倍程度がよい。ルビや圏点を使うのであれば、やや広めで確保する。行間が狭いと読んでいる行を見誤りやすくなる。また、同じ行間でも字詰が長くなる、あるいは行数が増えれば行間が詰まって見える。

段数と段間

段組の採用の可否は判型に左右される。文庫判であれば、一段組を採用する。新書判は一段組、二段組のどちらを採用しても構わない。商業出版と同人出版との界隈を見廻してみると、二段組を採用しているものや一段組を採用しているものが混在して居る感じである。A5判であれば、二段組を採用する。一段組であると字詰が長くなりすぎてしまう。ただし、天地の余白を大きくして字詰を抑えたり、行間を広めにとれば、一段組でも構わないだろうが、ページあたりの収容字数は小さくなる。

段間は本文文字サイズの2倍を基準とする。詰めるにしても1.5倍、空けるにしても3倍である。一ページあたりの字詰を増やすためにどうしても段間を詰めたい時は、段間に罫線(段ケイ)を入れて段と段との区切りを明確にする。