小説における記号類や数字の表記
約物の表記
日本語では漢字・ひらがな・カタカナ・ラテン文字を表記に使用する他、その補助のために句読点や鍵括弧といった記号類が使用される。この記号類を約物(やくもの)と呼ぶ。
約物(記号類)は、原則として二バイト文字で統一する。本来、二バイト文字の約物と一バイト文字の約物とにおいて意味の違いはないが、ほとんどのDTPソフトウェア・ワードプロセッサでは二バイト文字の約物は和文文字として処理され、一バイト文字の約物は欧文文字として扱われる。欧文文字はアルファベッドを考慮して設計されているためベースラインが違うため、一バイト文字の約物はずれて見えてしまい体裁が悪い。
主な約物は次の通りであり、以下に掲げたうち「ピリオド」「コンマ」「シングルクオーテーション」「二重引用符(横書き)」「コロン」「セミコロン」に関してはフォントの都合上、縦組では使用することができない。
約物 | 約物名称 |
---|---|
。 | 句点、マル |
、 | 読点、テン |
. | ピリオド |
, | コンマ |
・ | 中黒 |
: | コロン |
; | セミコロン |
? | 疑問符 |
! | 感嘆符 |
!? | ダブルだれ |
?? | 二つ耳 |
!! | 雨だれ二つ |
/ | スラッシュ |
\ | 逆スラッシュ |
‘’ | シングルクオーテンション |
“” | 二重引用符(横書き) |
〝〟 | 二重引用符(縦書き) |
「」 | 鍵括弧 |
『』 | 二重鍵括弧 |
() | パーレン、括弧、丸括弧 |
{} | 中括弧、波括弧、ブレース |
[] | 大括弧、ブラケット |
〈〉 | 山がた、山括弧 |
《》 | 二重山がた、二重山括弧 |
【】 | 墨付き括弧、墨付きパーレン、太きっこう |
〔〕 | きっこう括弧 |
‐ | ハイフン |
= | 二重ハイフン |
― | 全角ダーシ |
~ | 波ダーシ |
… | 三点リーダー |
‥ | 二点リーダー |
ー | 音引き、長音記号 |
々ゝヽ | 踊り字、繰り返し符号 |
鍵括弧・二重鍵括弧
主に会話文や強調として使われる。
山括弧・二重山括弧
強調として使われる。
墨付きパーレン
強調あるいは見出しの明示のため使われる。
パーレン
主に本文中の注釈として使われる。
きっこう括弧
主に引用文における引用者注や翻訳文における訳者注として使われる。
中黒
関連性の強い単語を列挙するときの単語の区切り、あるいは縦組における小数点として用いる。外国人名の姓と名の区切りとしても使う。
全角ダーシ
主に単語の言い換えや文や語のつなぎとして使われる。全角ダーシは偶数個並べて使う。
三点リーダ
沈黙や余韻を示すため、あるいは文や語のつなぎとして使われる。三点リーダは偶数個並べて使う。
波ダーシ
数値の範囲を示すために用いる。砕けた表現として長音記号としても用いられることがある。
疑問符と感嘆符
疑問符と感嘆符の直後には全角空白を挿入する。基本として全角表記であるが、「!?」、「!!」、「??」の類は半角表記し、DTPソフトウェア、ワードプロセッサ上で縦中横(縦組の中に横組の表記を挿入すること)を行う。
ハイフン・二重ハイフン
外国人名の姓と名の区切りとして用いる。ハイフンは数値の範囲を示すために用いることがある。
数字の表記
小説では数字の表記は漢数字とすることが多いが、表現の都合上算用数字を使用することもある。
漢数字による表記
単位語(十・百・千・万・億・兆など)を用いるかそうでないかの二つの方針がある。四桁ごと、つまり万・億・兆という単位語を用いることがわかりやいし一般的である。例えば、「八八兆五四八〇億円」「一億二七七六万人」といった具合である。
算用数字による表記
表現の都合上、例外的に算用数字による表記を採用する場合もある。また、例としては少ないが算用数字による整理を原則とする作品もあるかもしれない。
数字は二バイト文字での表記を基本とする。そのほうが体裁が良い。ただし、二桁の数字に関しては、一バイト文字で表記し、縦中横処理を行って縦に起こしたほうが体裁よく見える。
また、算用数字による整理でも、単位語を用いた方がよい。
算用数字による整理を基本としても、「一つ、二つ、三つ……」「概数」「熟語・慣用語」は漢数字で整理する。
英字の表記
英字略称(DTP、WTO)は二バイト文字で表記し和文文字とする。
英単語・英文ならば一バイト文字で欧文として表記する。ただし、数文字程度の単語なら二バイト文字で表記し、和文として打ち込んだほうが体裁が良い。